映画「THIS IS IT」公開

マイケル・ジャクソンは何という壮大なステージを創ろうとしていたんだろうか。
これは単なるコンサートライブではない。
リアルなインパクトを与えるマンハッタンの背景、古いギャング映画、ウェストサイドストーリー風の背景、特殊メイクを最新にしたスリラーのゾンビ、映像とライブの舞台装置をミックスさせたアースソング、シルク・ドゥ・ソレイユ風ダンサー、様々なジャンルの欠片が最高のクオリティを持ちながらこのステージに散りばめられている。そして、これらは全てマイケル・ジャクソンを核に一つの溶け合っているのだ。
このステージは、マイケルが、ジャクソンズ、いやそれよりももっと前、ちっちゃなマイケルだった頃から憧れて頭に描いた世界から始まった彼のショーという1ジャンルの集大成と言うべきものだ。

私は、映画が始まって20分ほどだろうか?滝のような流れる自らの涙に邪魔されながらも、瞬きもせずに画面の中の彼を見つめ続けていた。
徐々に、映像の中に引き込まれていく。
と、もう、そこが映画館であることが不思議に思えていた。
ライブ会場にいるような気持になって、心も身体もマイケルとひとつになったように見入っていた。
なぜ声を掛けちゃいけないんだろう?なぜ踊ってはいけないんだろう?なぜ歌っちゃいけないんだろう?
本当に不思議だった。
心の中で、踊り叫び歌っていた。
これを観るはずだったのだ。
一緒にマイケルの世界に溶け込んでしまうはずだったのだ。
ロンドンの初日から3公演を押さえていた。
一番いい席はA3ではあるが最前列だった。

当然この映画の中には、パフォーマンスだけではなく、リハーサル中のプロフェッショナルとしてのマイケル・ジャクソンの仕事も見せて貰った。
いかにもマイケルらしい、モノ言いだったり、反応だったり、相変わらずのスタボーンさとか、そういう部分を見ていると思わずクスっとしてしまう。

マイケルのこのまるで日本人のような廻りくどい物言いは、通常、欧米人にはなかなか伝わらないというか、私の知っている欧米人とか帰国子女には一切伝わらない、それを考えると、周囲の方もマイケル慣れしているのかもしれない。
マイケルとこの「THIS IS IT」のステージを創り上げていったメンバーは確かにマイケルも言っているように家族のような関係になっていっていたのがよく分かる。これは私の知る限りではかつてないことだったと思う。
マイケルがこれだけ多くの人々に対して打ち解けた態度でリハーサルに臨めたのは、年齢的な幅というか、これこそがマチュアってことなのか。

ところで、中にはマイケルがあんなにもまだ踊れる、歌えるなんて、と思っていなかった人もいたようだが、マイケルは根っからのダンサーでミュージシャンなのだから、見くびってはいけない。

私は、この映画のエンディングを観て、監督のケニー・オルテガに、「私たちファンはマイケルを映像ライブで生きているように感じたいのだ」というメッセージと念を送り続けたその想いが通じたようなそんな気がした。

今日は確かに生きたマイケルに会えた。
ステージ上にそして客席にも、後ろにも隣にも、マイケルはそこにいた。
Michael Jackson Lives Forever!