ファンのためのTHIS IS ITツアー

映画化された『THIS IS IT』の中でオープニングで「for the fans」と胸がしめつけられるような文字が表示されるのだが、意外に私たち長年のファンは冷静で、これはオルテガが、用意したものだ、と心の何処かで思ってしまうのではないだろうか。
そのくらいにマイケルジャクソンは私たちファンにとって、雲の上の大スターである。
長年に渡って、スーパースターであり、そして誰よりも人間らしいマイケル、その人と私たちファンの間は、多くの紆余曲折の経験を共にしてきたことで、少しずつ少しずつ、キョリを縮めてきた。
過去には、やっと近いところまで辿り着いたと思ったら、次の時にはまた遠くへ行ってしまう、そんな存在だった。
マイケルはその辺にいる人とは違う。
マイケルはKINGなのだ。
KINGはファンを愛していても、ファンの言うことに振り回されてはならない。
ファンというのは時々、独善的だし、オタクだから、ファンが望むものを一般も望むとは限らない。成功する物を創りだすにはファンのいうことばかり聞いていてはいけない、ときどき私はマイケルはそう思っていやしないかと思っていた。(それは、自虐的な感覚なのかもしれないのだが。)


しかし、今回のTHIS IS ITツアー、これは、まさに彼がファンのために用意したツアーだった。
それは、マイケルが、予定していたツアープログラムとセットリストでよく分かる。映画『THIS IS IT』の中に含まれている曲と含まれていないが存在した曲。


吉岡さんのブログでは『ディス・イズ・イット』秘話としてバシリ・ジョンソンのインタビューからDVD、ブルーレイでは伝えられていない情報を伝えて下さっている。
(吉岡正晴のソウル・サーチンURL:http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=soulsearchin

私はこれを読んで戦慄した。
例えば、
あの幻の(と言っても私は一度観てはいるが)「ダーティー・ダイアナ」をスラッシュが来たときに飛び入りでできるように準備していた。バンドはこの曲もほぼ完成させていた。マイケルはファンがこの曲をどれ程望んできたかを知っている。


そして、どうしても外して欲しくない曲、「ウィ・アー・ザ・ワールド」と「ヒール・ザ・ワールド」。
これはメドレーでやるイメージで、リハーサルしていたという。
(これらのリハは映画に使えるほどのクオリティーの高い映像が残っていなかったらしいとのこと)

また、ファンにとって特別に大切な曲、『ユー・アー・ノット・アローン』、『ウィル・ユー・ビー・ゼア』もリハーサルしていた。
特にWill You Be Thereは、ヒストリーでは外されてしまったけれども、すごく重要な一曲だ。これを復活させるのもまさにファンの声を聞いてのことだろう。
THIS IS ITツアーは、ファンが、撰んだファンが好きな曲をやるというのは本当だったのだ。


加えて、ミック・ジャガーとの「ステート・オブ・ショック」もほぼ完成形だった。ミックの飛び入りを想定して練習していたという。
ラッキーな誰かがミック・ジャガーとマイケルジャクソンの夢の競演を目撃するはずだったのだ。
他にも、J5(J6)として兄弟での共演も準備していたようだし、それ以外にもゲストの想定をしていたらしいので、もしかしたら、スティービーワンダーもしくは、ポールマッカートニーとの競演も考えていたかもしれない。


なにもかも全てがまさに夢のようなステージなのだ。
ファンならこれがどれ程貴重なものになったかがよく分かるだろう。
観ることが叶わなかったこの夢のショー。


でも、考えてみれば、マイケルは、今回ほどファンのためにという意識はなくても、この夢のショーを、既に過去、何度も私たちにその都度、魅せてくれてきていた。


(私は観ていない)ビクトリーツアーも空前の伝説的なショーだ。
ソロ初のバッドツアーもそれを引き継いで、回を重ねる毎に巨大化していった奇跡のショーとなった。
一層メッセージ性が高まったデンジャラスツアーは、MJライブとしての頂点であり、完成形の入り口だった。
ヒストリーツアーは、それを引き継いで、より技の高いパフォーマンス、より多くの国を廻る大規模な世界ツアー、そしてよりシンプルなメッセージを人々に残した。
そして、THIS IS ITツアー。
マイケルのショーの完成形の完成形、ステージは私たちの心の中だ。

マイケル、ありがとう!!